前向きな心の傾向が、健康や幸福度に影響するという科学的な研究が数多くあります。楽観が幸福につながるのは、心の傾向が有益な行動と結びついた結果であることは、ほぼ間違いないでしょう。
そして楽観は寿命にも影響するのです。
前向きで明るいシスターが長生きだった
楽観と寿命の関係を示した研究で非常に有名なのが、ケンタッキー大学のデボラ・ダナー氏とその同僚が行った調査です。全米各地180人のカトリックのシスターが手書きで書いた日記帳を検証しました。日記には彼女らが、1930年に修道院に入った当初からの生活が綴られていました。
この調査で興味深く信憑性に長けている部分は、シスターはみな生涯の大半を世間から隔絶された状況で過ごし、食事や生活習慣にも大きな差がないということです。
調査開始の平均年齢は22歳で、ダナー率いる研究チームはすべてのシスターの人生を以後60年にわたって追い続けました。調査終了時の年齢は75歳から95歳。研究チームは日々の出来事や事件にどう反応したかなど日記を注意深く検証し、どのシスターが楽観的なものの見方をするか、どのシスターが悲観的な世界観をもっているかを符号化しました。
1990年代に研究チームが接触したとき、180人のうち76人が死亡していました。アメリカ人の平均寿命を超えたシスターはこの時点で50%以上。修道院での禁欲的かつ健康的な生活形態を考慮すれば、この数字は驚きではないかもしれませんが、注目すべき点は楽観主義的なシスターがより長生きしていたところです。
若い頃、陽気で明るい日記を書いていたシスターたちは暗い日記を書いていた同僚と比べ、平均で10年も長生きをしていました。バラ色の世界観をもつことで10年分の余命がプレゼントされるのは注目に値します。
楽観的に考えればアイディアも出やすくなる
ポジティブな感情はアイディアの幅を広げるのに役立ち、逆境を打開しやすくします。これを実証する典型的な次のような実験があります。
被験者にさまざまなお菓子が入った袋をプレゼントしたり、愉快なビデオを見せたりしてポジティブな気分を一時的に盛り上げます。その上で「30分ほど自由な時間があったら、どんなことがしたいか?」の答えを書き出すように指示しました。するとポジティブな気分になっていた人は、恐怖映画を見せられた別の被験者よりもずっと多くのアイディアを考えついたのです。
恐怖のようなネガティブな感情の作用のひとつは、潜在的な脅威に注意を集中させることです。この実験の結果は非常に理にかなっていると言えます。対照的にポジティブな感情は関心の幅や奥行きを広げる作用をもち、概して創造性の向上につながります。
オックスフォード大学感情神経科学センター教授のエレーヌ・フォックス氏のこんな実験があります。学生たちに気分を上向きもしくは下向きにするために、コメディ映画か悲しい映画のビデオを見せました。そのあとで学生にいくつかのパズルを渡し、それらを解くように指示しました。するとポジティブな気分になっていた学生は、暗い気分の学生よりもおおむね良い成績をおさめることができたのです!
喜びや幸福などポジティブな気分でいるとき、人間の思考の幅は自然に拡大します。そのおかげでより創造的になり、枠にとらわれずに考えることができるようになります。
チャーチルとエジソンとベゾスから学ぶ楽観性
生涯で幾度も逆境におちいったイギリスの元首相ウィンストン・チャーチルは、「成功とは失敗に次ぐ失敗を重ねても、けっして熱意を失わない能力のことだ。」と語っていました。
類まれな楽観でまわりの人々を引きつけたトーマス・エイジソンは、自分のもとで働く人間をいつも「絶対にあきらめるな」と励まし続けました。電球を開発するために作った施策が1万個を超えていたことを知って、エジソンから次の名言が生まれました。「失敗したのではない。うまくいかない方法を1万通り見つけただけのことだ。」
アマゾン・ドットコムの創始者ジェフ・ベゾス氏にとって最良の資産であり成功の鍵となったのは、自分の楽観的な性格だと言います。「楽観主義は困難な何かを行うときには欠かせない要素だ。」と語っています。
楽観主義者は失敗が起きてもそれをうまく取り扱い、結果的に最大の成功を収めている例が多いのです。
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