「ゲームは時間の無駄」――そんな風に言われた時代もありました。しかし、現代の心理学、特にポジティブ心理学の世界では、その常識が覆されています。

ゲームが幸福度を高めるという科学的根拠

オックスフォード大学の研究など、複数の最新データに基づくと、ゲームが幸福度に最もポジティブな影響を及ぼすのは**「1日1時間程度」、あるいは「質が良ければ(本人が楽しんでいれば)時間はあまり関係ない」**という結論が出ています。

1. 「1日1時間」が黄金比

オックスフォード大学のアンドリュー・プリジビルスキ博士らの研究(約5000人の若者を対象)では、以下の結果が出ています。

  • 1日1時間以内:
    全くプレイしない子供よりも幸福度や生活満足度が高く、社交的である。

  • 1日3時間以上:
    逆に満足度が下がり、落ち着きのなさや不注意などのリスクが高まる可能性がある。 つまり、**「適度な時間(1日1時間前後)」**が、生活のスパイスとして最も機能するということです。

2. 時間よりも「質(モチベーション)」が重要

さらに最近の研究では、**「何時間やったか」よりも「なぜやったか」**が幸福度を左右することが分かってきました。

  • 自律的なプレイ(やりたくてやっている):
    4時間プレイしても幸福度は高いまま、あるいは上昇する。

  • 強迫的なプレイ(やらされている、やめられない):
    短時間でも幸福度は下がる。

3. 日本の最新研究でも裏付け

日本大学や大阪大学が2024年に発表した研究でも、ゲーム機(Nintendo SwitchやPS5)を所有しプレイすることは、メンタルヘルスを改善し人生満足度を高める効果があることが確認されました。

ただし、**「3時間以上プレイするとポジティブな効果が薄れ始める」**という傾向も見られています。

今回は、私が先日クリアした名作『ファイナルファンタジー1(PS1版)』の体験を通じ、ゲームがいかに私たちのマインドセットを豊かにしてくれるかを考察します。

ちなみに私の場合は1週間にせいぜい1時間程度のプレイ時間でしたので、クリアするまでに半年かかりましたが。笑

1. 「地道な努力」が報われる快感:有能感の醸成

PS1版のファイナルファンタジー1は、現代の親切すぎるゲームに比べると、決して楽な道のりではありません。

慎重なレベル上げや、限られたリソースでのダンジョン攻略が求められます。

しかし、この「地道な準備」こそが重要です。

ポジティブ心理学のPERMAモデルにおける**「達成(Accomplishment)」**は、単なる結果ではなく、そこに至るプロセスへの自己投資を含みます。

苦労して覚えた魔法や、ようやく購入した強い武器でボスを倒した瞬間の喜びは、実生活で私たちが「困難を乗り越える力(自己効力感)」を養うシミュレーションになります。

2. 時を忘れる「フロー体験」:没頭の力

ファイナルファンタジー1の冒険に夢中になっている間、私たちは日常の悩みやストレスから切り離されます。この状態を心理学では**「フロー(Engagement)」**と呼びます。

特にドット絵の幻想的な世界を探索し、次にどこへ行くべきか試行錯誤する時間は、脳にとって非常に質の高い休息となります。

幸福とは、ただ「楽をすること」ではありません。

何かに深く没頭し、自分という意識が消えるほどの体験をすること。ゲームは、現代人が忘れがちなこの「没頭する技術」を取り戻させてくれます。

3. 「光の戦士」という役割:意味と目的の再発見

ファイナルファンタジー1の物語は、4人の若者が「光の戦士」としての使命を帯びて旅立つところから始まります。

ウェルビーイングの重要な柱の一つに**「意味(Meaning)」**があります。これは、自分よりも大きな存在のために貢献しているという感覚です。

ゲームの中で「世界に光を取り戻す」という大きな目的に向かって進む体験は、私たちの深層心理にある「誰かの役に立ちたい、目的を持って生きたい」という根源的な欲求を刺激します。

たとえ仮想の世界であっても、明確な目的を持って一歩ずつ進む感覚は、現実世界でのマインドセットを前向きに変える力を持っています。

結びに:幸福に「こだわりすぎない」冒険のススメ

最後に大切にしたいのは、この冒険において「効率」や「最短ルート」にこだわりすぎないことです。

持続的な幸福をつくる鍵は、結果としての「クリア」だけでなく、道中で迷ったり、全滅したりする「過程そのもの」を面白がれる心の余裕にあります。

人生という名の冒険も同じです。上手くいかない時も含めて、自分の物語を楽しめているか。

ファイナルファンタジー1をクリアした今、私の手元に残ったのは、エンディングの感動以上に、「困難を楽しみ、目的を持って進み続けた」という自分への信頼でした。

皆さんも、時にはコントローラーを手に、自分だけの幸福の種を探す冒険に出かけてみてはいかがでしょうか。

「心の冒険」へ出かけるための扉

記事で触れた『有能感』や『自律性』を最もピュアな形で体験できるのが、ファイナルファンタジー1かもしれません。1日1時間の冒険(あるいは週1時間。笑)が、あなたの明日への活力をどう変えるか。ぜひ、その手でコントローラーを握って確かめてみてください。